妖精のエピソードの紹介
ある日、絵の中に妖精たちがやってきました。
もともと妖精が好きだったとか、お花が大好きだったとか、
そういうわけではないのです。
なんとなく…なんとなく…子どもを描いて、羽をつけて「虫みたい!」と喜んでいたのでした。
しばらくは、そういう子たちをよく描いていました。
それから数ヶ月、ふと目を閉じた時に、「わたしよ!」と言われたのです。
(正確にはそんな気がした…ですが)
子どもの妖精が「なんでわかんないの !?」と言わんばかりに、目の前に飛んでいる、
そんなイメージで、びっくりして目を開けた私は、あたりをキョロキョロと見回してしまいました。
いったいいつから、近くにいたの?
それを教えてもらったのは2007年の終わり、
作品展の準備をしている時でした。
作品展に添える言葉を書こうとして考え始めたら、
「あ、あの時だ!」と思い当たる瞬間がよみがえってきたのです。
足もとから、そして胸の中から、あたたかい風がふわ〜っと吹いて
涙が溢れてしまった瞬間です。
これが、その時のことです。
絵の中に妖精がやってきた時
母は花が好きだった。
どんなに忙しくても、毎朝花たちに水をやり、手入れをし、
庭には季節ごとに色とりどりの美しい花たちが咲いた。
私は、あまり花は好きではなかった。
庭を眺める母の笑顔が、私や家族に向ける笑顔とはまた違った種類のものだったから。
それがくやしかったのかもしれない。
大人になって、母が亡くなって何年もたってから、
ふと花に話しかける母の姿を思い出すようになった。
どんなに母は、花に癒されていたのか、後になってやっとわかるようになった。
ある日、家の近くの遊歩道を自転車で通り抜ける時、
道の両脇から、春の花たちが手を伸ばしているようで、思わず私は話しかけた。
「ずっと母の心を癒してくれてありがとう。
あなたたちはあの頃のうちの庭の花たちとも、きっとつながっているのよね。
ありがとう…ほんとにありがとう」
それに答えてくれるかのように、花は大きく揺れてあたたかい風が吹いた。
「時空を超えたコミュニケーションてあるんだ…!」
それから私は、妖精たちと友だちになった。
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